測定誤差について

「測定誤差」とは

測定にまつわる誤差は、測定や検査という行為をする上では必ず発生し、避けては通れません。
JISでは「測定誤差」を以下のように定義しています。

「(測定)誤差」

測定値から真値を引いた値。

JIS Z 8103:2019 計測用語 – 基本用語

要するに、

測定誤差 = 測定値 ー 真値


です。この場合、真値というのは図面の値ではなく、測定している製品の寸法のことです。ということは、もし測定誤差を知りたければ、その製品の真の寸法を知らなければならないということです。そのためには、今の測定器より精度の高い測定器や測定方法で真値に近い値を測定して、その値との差(=測定誤差)を求める必要があります。

「測定誤差」の種類

この「測定誤差」を原因別に分類すると、下表のようになります。

表.測定誤差の種類と原因
No.誤差の種類JISの定義
JIS Z 8103:2019 計測用語 – 基本用語
原因
1測定器の
固有誤差
指定された標準状態における測定器又は測定システムの誤差測定器の構成上または取り扱いにより起こる目盛りの不同、摩擦、測定圧の変化、ねじピッチの不同
2測定者の
個人誤差
測定者固有のくせによって,測定上又は調整上に生じる誤差測定者のクセ、熟練程度により起こる目盛の読取りのクセ、取り扱い方法のクセ
3外部条件
による誤差
測定を行う環境、特に、室温、採光による影響温度変化、照明方法
4偶然誤差反復測定において,予測が不可能な変化をする測定誤差の成分種々の条件が重なり合って起こり、原因が判らぬ場合が多い外囲状況の微変動、測定者の心理的影響

「測定誤差」を小さくするために

上表の誤差の種類の中で、4 偶然誤差は原因がわからず、予測不可能な誤差なので対策を取りようがありません。しかし、それ以外の、1 測定器の固有誤差2 測定者の個人誤差3 外部条件による誤差は対策によっては、誤差をより小さくできるということです。
下表にそのための対策を示します。

表.測定誤差を小さくする対策
No.誤差の種類JISの定義
JIS Z 8103:2019 計測用語 – 基本用語
原因対策
1測定器の
固有誤差
指定された標準状態における測定器又は測定システムの誤差測定器の構成上または取り扱いにより起こる公差に対し測定精度が1ランク上の測定器を選択する
測定器の固有誤差を取り除く(測定器の定期的な校正・メンテナンスの実施と適切な取扱いなど)
2測定者の
個人誤差
測定者固有のくせによって,測定上又は調整上に生じる誤差測定者のクセ、熟練程度により起こる作業者教育による熟練度向上と作業標準化によるバラツキ抑制
手動測定の自動化
3外部条件
による誤差
測定を行う環境、特に、室温、採光による影響恒温室、暗室、クリーンルームの使用など、外部環境を一定に保つ
4偶然誤差反復測定において,予測が不可能な変化をする測定誤差の成分種々の条件が重なり合って起こり、原因が判らぬ場合が多い

上表にあげた 2 測定者の個人誤差の対策の中で当社で実施している内容について下記で説明します。

計測器の定期的な校正・メンテナンスと適切な取扱い

当社では、製品測定で使用するすべての計測器に対して、定期校正を実施しています。そして合格品には検定ラベルを貼り、有効期限がわかるようにしています(左画像)。
また、使用時に日常点検を実施し、いつもと違うと感じた場合や測定器を落下させてしまったような場合には、速やかに測定器管理部署である品質保証部へ連絡してもらい、確認するようにしています。

作業の標準化と作業者の教育

当社では、製品の検査を行う者に対し、作業要領書を使用して検査内容、検査方法を教育し、その有効性を確認しています。
決められた事を決められた通りに行うことで、誰が検査しても同じように行われ、個人による誤測定が軽減されます。
また、比較測定器のマスター合わせ(ゼロ合わせ)の確認も同様に、方法、タイミングが決められており、それに基づいて実施しています。