幾何特性について

幾何特性、幾何公差およびGPS

「幾何特性」や「幾何公差」については、「JIS Z 8114:1999 製図-製図用語」で以下のように定義されています。

「幾何特性」

「幾何公差」

形状,姿勢,位置及び振れを規制する特性。

幾何偏差(形状,姿勢及び位置の偏差並びに振れ)の許容値。

JIS Z8114:1999 – 製図-製図用語

また、「幾何公差」の定義にある「幾何偏差」は、「JIS B 0621:1984 幾何偏差の定義及び表示」に次のように定義されています。

「幾何偏差」

対象物の形状偏差,姿勢偏差,位置偏差及び振れ。

JIS B 0621:1984 – 幾何偏差の定義及び表示

さらに、最近では、国際規格との整合のために、「JIS B 0021 : 1998 製品の幾何特性仕様 (GPS) −幾何公差表示方式−形状,姿勢,位置及び振れの公差表示方式」で「加工物の幾何学的な定義に必要なすべての事項を含み,幾何公差表示方式に対する基礎事項と必要な基本的事項について規定」されている。この規格の元になっているのは、「ISO 14638:2015 Geometrical product specifications (GPS)」であり、この規格の”Introduction”の中で「Geometrical product specifications (GPS)」は次のように定義されています。

Geometrical Product Specification (ISO GPS) is the system used to define the geometrical requirements of workpieces in engineering specifications, and the requirements for their verification.

ISO 14638:2015 – Geometrical product specifications (GPS)

翻訳すると、「製品の幾何学特性仕様(ISO GPS)とは、エンジニアリング仕様書においてワークピース(製品)の幾何学的要件と、その検証のための要件を定義するために使用されるシステムである」となり、前述したJISの「加工物の幾何学的な定義に必要なすべての事項を含み,幾何公差表示方式に対する基礎事項と必要な基本的事項について規定」と同様の内容であることが見て取れます。
以上より、「Geometrical product specifications (GPS)」≒「製品の幾何特性+幾何公差」と言えそうです。

幾何特性の種類

「幾何特性」について、ISO/JISでは適応する形体や幾何公差の種類によって下表のように分類しています。

適応形体幾何公差の種類幾何特性の種類記号
単独形体
(データム不要)
形状公差
幾何学的に正しい形体(例えば,平面)をもつべき形体の形状偏差に対する幾何公差
真直度
平面度
真円度
円筒度
線の輪郭度
面の輪郭度





関連形体
(データム要)
姿勢公差
データムに関連して,幾何学的に正しい姿勢関係(例えば,平行)をもつべき形体の姿勢偏差に対する幾何公差
平行度
直角度
傾斜度
線の輪郭度
面の輪郭度




位置公差
データムに関連して,幾何学的に正しい位置関係(例えば,同軸)をもつべき形体の位置偏差に対する幾何公差
位置度
同心度
同軸度
対称度
線の輪郭度
面の輪郭度





振れ公差
データム軸直線を中心とする幾何学的に正しい回転面(データム軸直線に直角な円形平面を含む。)をもつべき形体
の振れに対する幾何公差
円筒振れ
全振れ

この表の中の「適応形体」の「単独形体」「関連形体」については、次のように定義されています。

「単独形体」

「関連形体」

「データム」

データムに関連なく幾何公差を決めることができる形体。例えば,真直度を問題にする軸線。

データムに関連して幾何公差を決める形体。例えば,平行度を問題にする軸線。

形体の姿勢公差・位置公差・振れ公差などを規制するために設定した理論的に正確な幾何学的基準。

JIS Z8114:1999 – 製図-製図用語

この中で「データム」とは、わかりやすく言うと、「測定する際の基準となる寸法」のことです。図面で関連形体の幾何公差を指定する場合に、基準となる軸、面、寸法をアルファベットで指定しますが、そのアルファベットをデータムと呼びます。
製品図面に記載された「幾何特性」「幾何公差」を正しく評価するには、その意味するところを正しく理解し、それに沿って適切な測定方法を選ぶ必要があります。